目黒区 都立大学駅前 すみクリニック 皮膚科・アレルギー科
保険診療
アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎はよく知られているように、非常にポピュラーな病気の一つです。日本にこの病気の概念が伝えられたのは昭和20年代になってからです。現代の日本では約10%の方に見られるという報告もあります。アトピー性皮膚炎の原因については、まだ研究段階のものも多くはっきりとわかっていません。基本的にアレルギー的な側面と乾燥肌に対する刺激反応(非アレルギー的側面)の影響が考えられています。諸説ある中で現在のところ、蕁麻疹のような即時型のアレルギー反応と接触皮膚炎(かぶれ)のような遅延型のアレルギー反応が複雑に関係し合っているという説や、21世紀になってから証明されるようになってきた遺伝子レベルで皮膚のバリア機能の不具合の説などが有力とされています。
この病気の特徴としては、慢性に経過し、年代ごとに症状を変化させることとともに、喘息や花粉症、食物アレルギーなど遺伝的にアトピー体質をもっている人に起こりやすく、皮膚が乾燥しやすいことがあげられます。診断には皮膚科専門医が皮膚症状をつぶさに観察することが重要ですが、基本的には乳児や小児のうちに自然と良くなってくることが多いものです。とはいえ、近年の生活様式や環境の変化に伴い、実際に日本においても乳児でアトピー性皮膚炎にかかっている人の割合は変化していないものの、幼小児から成人でアトピー性皮膚炎にかかっている人の割合が増えてきており、非常に治りづらい成人型のアトピー性皮膚炎も増加傾向にあります。
増悪させる因子は?
①洗わなさすぎることによる皮膚の汚れ、洗いすぎによる皮膚の乾燥
②ハウスダストやダニ、カビ、動物の毛など外的な因子によるアレルギー反応
③治療に使われる外用剤が合わない
④入浴習慣の問題やシャンプー・リンス類によるかぶれ
⑤民間療法や治療根拠のない外用剤・内服薬、合わない化粧品など
⑥洗剤やプールの塩素、皮膚に刺激のある衣服・寝具など
⑦気温や湿度の変化(こたつや電気毛布、部屋の乾燥等も)
⑧細菌やウィルスによる感染症
⑨慢性疲労や睡眠不足、感情的なストレス
⑩乳児では食物アレルギー etc.
実際の当院の診療現場ではこれだけでなく実に様々なことをお話しさせていただいておりますが、ここには書ききれないほどの実に様々な要因がアトピー性皮膚炎を悪化させるとされています。
この中で特に留意しておいていただきたいのは、⑩にあげた乳児の食物アレルギーです。採血されることのある項目の中に食物のIgE RASTがありますが、あくまでもこれは参考程度にとどめていただきたいと思っています。このIgE RAST値だけをみて食物除去が必要ではないかと考えておられる方が当院にも来院されるのですが、現在皮膚科専門医の間では、「実際にその食物を摂取してみて皮膚炎の増悪がみられるかどうかが重要であり、単純にIgE RAST値の結果だけをもって食物制限を行うのはナンセンスである。不必要な食物制限はかえって子供の成長に悪影響を及ぼす」と考えられており、実際にその食物を摂取してみて症状が悪化するかどうかが重要とされています。なお当院では、アレルギー反応が心配な食物の摂取方法や対策についても色々とお話できますので、お気軽にご相談下さい。
治療法について
当院では、地道ではありますが最もスタンダードとされる日本皮膚科学会のガイドラインに基づいた治療を行っています。また、各々の症状に適したアレルギー検査を併用することでアレルゲンの特定にも努めています。
ご存知の方も多いと思いますが、アトピービジネスと揶揄されるような、いわゆる根拠のない治療は行っていませんのでご了承下さい。とはいえ、実際にアトピー性皮膚炎はまだまだわからないところも多い難しい病気です。私たちも新たな治療については謙虚に耳を傾け、科学的に判断しながら患者様と一緒に治療に取り組みたいと切に願っております。
基本的な治療に用いる投薬としては、保湿剤を用いたスキンケアを中心において、症状に合わせたステロイド外用剤や免疫調整外用剤を用いることもありますし、内服薬としてステロイド内服薬を使うことは滅多にありませんが抗アレルギー剤、抗ヒスタミン剤などの内服治療も行っております。非常に重症の場合には保険適応のあるシクロスポリンという免疫抑制剤を用いた治療経験も豊富です。その他、ご希望の方には漢方治療も行うことができます。
さらにそれでもなかなか効果をあげることのできない患者様がいらっしゃることも事実です。そうした場合に、次の一手を講じておくことも医療者としての務めであると考え、当院では安全な医療用の紫外線を照射する紫外線治療器(PUVA、ナローバンドUVB)も備えております。(近年、紫外線療法日本でもアトピー性皮膚炎に対して保険適応となっています)
最後に
アトピー性皮膚炎は非常に慢性的な病気です。なかなか治りにくく途中で治療を投げ出してしまいたくなることも多々あると思います。また、アトピー性皮膚炎のお子様をお持ちのご両親の悩みもどれほどのものか想像に難くありません。でも、やはり諦めず地道にコツコツを治していくことがやはり一番の近道であると私たちは信じています。些細なことでも気軽に相談していただけるような良い関係を築き上げながら、粘り強く、一緒に取り組んでいけることを願っております。
![]() |
![]() |
当院で使用している紫外線治療器「デルマレイ200」 PUVA、ナローバンドUVBともに使用します。 |