目黒区 都立大学駅前 すみクリニック 皮膚科・アレルギー科
保険診療
ニキビ(尋常性ざ瘡)
“にきび”って?
“にきび”は程度の差こそあれ、誰でも一度は経験するものです。ただ症状が強い場合には皮膚の病気として治療する必要があります。実際、顔にできることが多いので、一度できてしまうと想像以上の精神的ストレスをかかえてしまい、悩んでいる人が多いのも事実です。
“にきび”の症状と原因
“にきび”は皮脂腺を持つ毛包に起きる病気です。 症状としては大きく二段階に分けることができます。 第一段階は面皰(めんぽう)と呼ばれ、目に見えない極めて小さい毛穴のつまりや、白にきびや黒にきびを指します。そして第二段階になると増殖したニキビ菌やたまった皮脂に炎症が起こり、赤にきびと呼ばれる症状になります。
ガルデルマ(株)/塩野義製薬(株)提供パンフレットより
“にきび”が起きるには「皮脂腺を持つ毛包」「皮脂分泌の亢進」「毛穴の閉塞」「アクネ菌(ニキビ菌)」が重要です。
「皮脂腺も持つ毛包」は顔や胸に多く、毛自身は細く短く、皮脂腺は大きく数も多いのが特徴です。「皮脂分泌の亢進」には性ホルモン、特に男性ホルモンの影響を強くうけます。「毛穴の閉塞」については閉塞してしまう原因に諸説あり、まだはっきりとしたことはわかっていません。「アクネ菌」は毛包に住んでいる菌で誰しもが持っているものです。このアクネ菌は皮脂を食べて生きています。つまり毛包に皮脂がたまった状態はアクネ菌にとって非常に良い環境ともいえ、菌は増加し菌が出す様々な物質により炎症が起きると考えられています。
“にきび”ができてしまったら・・・
“にきび”ができてしまったら治療が必要です。赤にきびができてしまい、炎症がさらに進むと毛包が壊され膿疱や硬結、ひどい場合には腫瘤となってしまいます。このまま放置しているといわゆる「にきびあと」を残すことになってしまい、陥没したりケロイドのよう隆起して痕が残ってしまいます。一旦「にきびあと」を作ってしまうと、皮膚を元の状態に戻すことは困難になるので早めに治療することが大切になってきます。日本では海外と比較して軽症のにきびの方が多いので、薬局で市販薬を購入して治療されている方が多いのですが、「にきびあと」を作ってしまう前の段階、つまり白にきびや黒にきび、赤にきびのうちに、この程度ならと放置せず医療機関を受診して症状に合わせた治療を行うことをおすすめします。
“にきび”治療の実際
“にきび”をひどくしない、ということが治療方針の肝です。そのためには患者さん自身だけでなく周りの人も、”にきび“を正しく理解して、すぐに効果が出なくても根気よく治療を続けることが非常に大切です。
にきびの第一段階で、小さな毛穴のつまりや白にきび、黒にきびのときは従来はイオウなどを含んだ塗り薬が用いられてきましたが、世界80ヶ国以上で使われていてようやく日本でも使えるようになったアダパレン(ディフェリン®)を外用する方法が推奨されています。
一方で第二段階になってしまったにきびに対しては、アダパレン(ディフェリン®)を用いることはもちろん、症状に応じて抗菌剤を塗り薬や飲み薬として使用することが一般的です。
従来通りの面皰圧出器を使って毛穴にたまった皮脂を押し出すこともありますが、推奨される治療法とはいえません。
その他の方法として、ケミカルピーリング(保険適応外)も行っています。当院ではサリチル酸マクロゴールによるケミカルピーリングを行っており、従来のものに比べて刺激感が少なく、施行回数も少なくて済み、副作用も少ないことで知られており、皮脂がたまりにくくにきびができにくい状態になる非常に安全で有効な方法です。
◎2015年4月から日本の“にきび”治療が「世界標準」にかわります
日本皮膚科学会の厚生労働省への働きかけもあり、2015年4月より過酸化ベンゾイル(BPO, 商品名:ベピオ)をようやく日本でも保険診療にて治療に用いることができるようになりました。
“にきび”治療において、世界中で重大な懸念とされているのは内服や外用の抗生物質を長期間にわたって連用することによる耐性出現の問題でした。日本においては今までも、耐性菌を持っている方では治療効果があがらないことや、漫然と抗生物質を内服されている方では体の他の部位にも耐性菌が出現して何か他の病気になったときに治療効果があがらなくなることは知られていたので、漫然と抗生物質を投与しないように注意が払われてきました。
アダパレン(ディフェリン®)も過酸化ベンゾイル(BPO, ベピオ®)も、ともに炎症に対する効果を発揮します。
両者の違いをあげるとするならは、過酸化ベンゾイル(BPO, ベピオ®)は①P.acnes(アクネ菌)に作用して抗生物質に代わる抗菌作用を有すること、②機械的に角質の剥離作用を有することといえます。
対して、アダパレン(ディフェリン®)は表皮の顆粒細胞が角質細胞に分化しすぎるのを抑制することで角層が薄くなり、“にきび”の膿疱や面皰が排出されるという特徴をもっているといえます。
“にきび”治療は非常に奥が深く、実はいまだに米国と欧州でも治療内容の推奨度に違いがあります。ただ、欧米に限らず日本でも治療を行う上で重要とされることは共通しています。
内服や外用の抗生物質は漫然と投与せず効果的に使うこと、疾患の急性期から維持期まで長く使っていくことのできるアダパレン(ディフェリン®)や過酸化ベンゾイル(BPO, ベピオ®)などといった薬剤をうまく使っていくことが求められています。
基本となる薬剤を用いて、様々な“にきび”に合った治療方法を継続して行っていく必要があるといえるでしょう。
“にきび”肌のケアのポイント
メイク落とし(クレンジング)
メイクによる毛穴の閉塞はにきび悪化の原因です。帰宅後はすぐにメイクを落とすようにしましょう。
口紅やアイメイクなどのポイントメイクは専用のリムーバーであらかじめ落としておきます。クレンジングはできれば洗い流すタイプのオイルクレンジングやジェルクレンジングなど肌に負担をかけない方法が望ましいと考えられます。力を入れずに指を円を描くように軽く滑らせてクレンジングとメイクをなじませます。その後、やさしく洗い流しましょう。
洗顔
1日2~3回行うことが望ましいとされています。朝は眠っている間にたまった余分な皮脂を洗い流すこと、夜はメイクを落とした後に汗やホコリなどの汚れを落とすことを目的とします。
洗顔料をしっかりと泡立ててから、泡で優しく肌をこすらないように洗って、ぬるま湯で髪の生え際などに洗顔料が残らないようよく洗い流しましょう。
あくまでもゴシゴシ洗うなど間違った洗顔法はにきびを悪化させるので、正しい洗顔法を身につけることが大切です。
保湿
にきび肌は、角層の保水力が低下して乾燥しやすい状態になっています。洗顔後は特に乾燥しやすい状態になっていますので、化粧水を使用します。化粧水だけで保湿力が足りない場合には、美容液や乳液、保湿薬を併用されることがよいでしょう。
当院でも病医院専用の敏感・乾燥肌用の基礎化粧品を取り扱っております。購入もできますので、お気軽にご相談下さい。
紫外線に対するケア
にきび肌の治療でケミカルピーリングを受けている方やピーリング効果のある石鹸や化粧水などを使用している方は、必ず日焼け止め(サンスクリーン剤)を使って下さい。
日焼け止めには、「紫外線吸収剤」や「紫外線散乱剤」が配合されています。「紫外線吸収剤」に刺激感を感じる方は「紫外線散乱剤」のみが入っているものを選ぶことが必要です。当院でもそれぞれ取り扱っており、購入することができますので、お気軽にご相談下さい。
化粧
にきびで悩まれていて、化粧をしてはいけないと思いこまれている方も多いようですが、気を付けるべきことにさえ留意すれば決してメイク禁止というわけではありませんのでご安心下さい。
気を付けるべき点は、①毛穴をふさがない、②にきびを目立たせない、③にきび肌用のノンコメドジェニック製品や油性ではないもの(オイルフリー)もしくは油分の少ないのものを使うことです。
ファンデーションを使用する場合でも油性のリキッドタイプなどのものは避け、長時間メイクしたまま過ごさないようにしましょう。決してにきびを隠そうとして重ね塗りをしたり、ファンデーションを複数使うことは避けた方がよいです。また、コンシーラーもにきびを悪化させる原因となります。
にきびを目立たなくするには、補色を使ってカラーコントロールをするようにして下さい。例えば、色素沈着が気になる方はイエロー系の化粧下地やパウダーファンデーション、フェイスパウダーを、赤にきびが気になる方はグリーン系のものを使うと目立ちにくくなります。
この他、にきびから視線をそらす目的のポイントメイクという方法も効果的です。アイメイクやリップメイクなどを印象的に使うと視線を目元や口元に集めて、見た目の印象でにきびから注意をそらすこともできます。
頭髪・衣服など
髪型を楽しむことは非常に大切なことではありますが、顔や首のにきびでは髪の毛の刺激がにきびを悪化させてしまいます。額やアゴにかかってしまうようなヘアスタイルは避けましょう。同じことが衣服についてもいえており、アゴに触れやすい服装は避けた方がよいです。また、普段からアゴ肘をつくような癖もしないようにしましょう。
食事で気を付けること
今のところ、特定の食品がにきびを改善させる、または悪化させるという根拠はありません。ただ、経験的に、糖分の多いチョコレートや菓子類、動物性脂肪分の多い食事、コーヒーやアルコールの過度の摂取はにきびを悪化させるようです。また、女性に多い便秘もにきびを悪化させますので、ビタミンや食物繊維が豊富な緑黄色野菜を積極的に摂るように気を付けて下さい。
その他
寝不足や過労はにきびを悪化させます。規則正しい生活を心がけ、ストレスを上手に発散するようにして下さい。また、にきびを気にするあまり、手や指で触ったり潰したりすることは禁物です。
にきびは若さのシンボルと言われた時代もありましたが、最近は30代や40代になってもにきびがみられるようになりました。諦めず根気強く早めの治療をうけられるようおすすめします。