目黒区 都立大学駅前 すみクリニック 皮膚科・アレルギー科
保険診療
金属アレルギーの診断
~当院では金属パッチテストを行っています~
私たちの生活環境中には、意外なほど金属であふれています。それにともない、金属アレルギーで困っておられる方が増えていますし、また、一生懸命治療されているにもかかわらず、なかなか治らずにいた皮膚症状が実は金属によるものであったということもあります。
金属が発症や増悪に関与しているといわれる皮膚疾患は非常に多岐にわたり、舌炎、舌痛症、口内炎、口唇炎、扁平苔癬、刺激性接触皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、全身性接触皮膚炎、汗疱、異汗性湿疹、貨幣状湿疹、自家感作性皮膚炎、滲出性紅斑、紅皮症、仮性アトピー性皮膚炎、掌蹠膿疱症、蕁麻疹、亜急性痒疹、多形慢性痒疹などが知られています。
もちろんこれらの疾患が全て金属が原因ということはなく、金属ばかりに原因を求めることには注意しなければならないことはいうまでもありません。
☆金属アレルギーとは?
金属アレルギーは直接金属がアレルギー反応を起こすことはありません。
汗や体液によって金属がイオン化して溶け出し、これが皮膚や粘膜で新たなタンパク質となります。これに免疫を担当する細胞が過剰に反応することで症状が出現します。
アレルギー反応といってもⅠ~Ⅳ型まであります。
普段、「アレルギー」といっているのは、花粉症や食物による蕁麻疹などのⅠ型のアレルギー反応ですが、この金属アレルギーはⅣ型のアレルギー反応です。
少し難しいお話になりますが、採血してスギやハウスダストなどで陽性だったというのはIgE抗体を介する反応でⅠ型の反応を見ていることになります。したがって、Ⅳ型の反応である金属アレルギーの診断はこうした採血での検査は行いません。
☆金属アレルギーの検査はどうするのか?
現在のところ、最も信頼性が高い検査はパッチテストであるとされています。
この他に採血した血液中のリンパ球と金属との相性(Stimulation index; S.I.)を測るリンパ球幼若化試験という検査もありますが、これは正常人でも陽性になることが多いため、診断に有用とはいえません。
したがって、まずはパッチテストを行うことが合理的といえます。
検査結果の解釈の上で注意しなければならないこととしては、検査及びその判定に計4回通院しなければならないことと、検査結果が陽性の場合はその金属のアレルギーであると診断できますが、陰性だったとしても検査中のコンディションなどの影響で必ずしも金属アレルギーではないと言い切れない部分があることがあげられます。
また、この金属パッチテストは検査に用いる試料が非常に高額にもかかわらず、日本の保険制度では検査を安価で実施しなくてはならず現状では採算がとれないため、実施している医療機関が限られています。
☆金属パッチテストの内容

☆金属パッチテストの内容
1. 検査当日
通常、上背部に試薬を含ませたシール状のパッチを貼ります。
上背部以外では上腕外側に貼ることもありますが、下背部や前腕には偽陰性を生じることが多いため貼りません。
貼ったパッチがはがれやすそうなときは、周囲を絆創膏で補強することもあります。
2. 2日後(第1回判定日)
パッチ除去後、判定を行います。
パッチは除去されているので入浴は可能
ですが、検査部位は激しく洗うなどしな
いようにして下さい。
3. 3日後(第2回判定日)
この日も判定を行います。
4. 7日後(第3回判定日)
判定を行い、検査終了です。
☆金属パッチテストのスケジュール

☆金属パッチテストを行う上での注意事項
1)検査を希望される方は予約が必要です。予約日に来院できない場合は、準備の都合がありますので、前日までにご連絡をお願いします。
2)検査中、パッチ貼付後から第1回判定(2日後)まで、入浴しないで下さい。また、ひどく汗をかかないように心がけ、激しい運動は控えるようにして下さい。したがって、検査に適した時期は10月頃~4月頃となり、夏場は正確に検査を行えないことも多く、この検査を行うことは推奨しません。
ただし、汗をかかないことを前提に、検査部位を濡らしたり蒸れたりしないよう工夫して洗髪するのは構いません。
3)多少痒くてもパッチをはがさないようにして下さい。それでもパッチがはがれそうなときには周囲を絆創膏で補強して下さい。掻いたり、叩いたりしてもいけません。まれに我慢できないほど強い痒みや痛みを生じることがありますが、そのような場合は除去するか来院するようにして下さい。
4)パッチをはがした後は、貼ってあった部位にマークをつけさせていただきます。後日、マークが薄れてきたときには上から書き足すようにして下さい。
5)検査の試薬が衣服につくこともありますので、多少検査試薬がついてもよい衣服を選ぶようにして下さい。また、パッチテストは背部に貼付しますので、貼付したテープがずれないようにするため、パッチの貼付中はブラジャーをしてはいけません。
6)判定するには経過時間が重要です。正確な判定のため、指定された時間帯に必ず来院されるようお願いします。
7)パッチテスト試薬により、非常に強い反応を起こした場合は色素沈着をしばらくの間、残すことがあります。まれに、色素脱失や瘢痕形成も起こすことがあります。また、パッチテスト用のテープでかぶれる方もまれにいらっしゃいます。あらかじめご了承下さい。
☆検査費用
健康保険が適応される検査です。
検査代としては1,080円です。(健康保険自己負担割合3割の場合)
ただし、初診料、再診料などは別途かかります。
☆食品中に含まれる金属について
食品に含まれる金属で皮膚炎などの症状を引き起こす場合もあります。
これを診断するにはパッチテストにて陽性であることが必須ですが、さらに金属負荷テストを行うことで確実に診断できるとされています。
金属により悪化していると考えられる場合には、金属除去を行うことで症状が改善するのを確認することも重要といえます。
実際には、金属は地殻に存在するものであり、農産物、樹木、雑草、動物魚介類など口にするもの全てに含まれており、原因となる金属を完全に摂取しないようにするのはほぼ不可能ですので、原因となる金属を多く含むものを出来る限り避けることとなります。
☆☆パッチテストで陽性になりやすい金属が含まれる代表的な食品

<参考資料:金属とその代表的な感作源の例>
