目黒区 都立大学駅前 すみクリニック 皮膚科・アレルギー科
保険診療
接触皮膚炎などアレルギー性皮膚疾患の検査
パッチテストパネル®(S)のご紹介
当院でも「かぶれた」といって受診される方は多くいらっしゃいますが、実際には「かぶれ」といえるアレルギー性接触皮膚炎を起こしていたり、乾燥肌から引き起こされる皮脂欠乏性皮膚炎であったり、蕁麻疹やニキビ(尋常性ざ瘡)であったり、はたまた思いもよらない疾患であったりすることをよくみかけます。
一言に「かぶれ」といっても、皮膚科専門医が思い描く「かぶれ」は、主に接触皮膚炎のことをさします。
☆接触皮膚炎の分類
1)刺激性接触皮膚炎
2)アレルギー性接触皮膚炎
3)光接触皮膚炎(光毒性接触皮膚炎、光アレルギー性接触皮膚炎)
4)全身性接触皮膚炎、接触皮膚炎症候群
5)接触蕁麻疹(アレルギー性、非アレルギー性)
アレルギー性接触皮膚炎は、ハプテンとよばれる抗原(タンパク質)が皮膚などから侵入することによって感作され皮膚炎などが惹起されるというTリンパ球等の働きにより発症する湿疹性の炎症反応のことをいいます。この反応は蕁麻疹や、アレルギー性鼻炎などの花粉症のような即時型のアレルギー反応(Ⅰ型)ではなく、遅延型のアレルギー反応(Ⅳ型)です。
接触皮膚炎は原因の除去により改善がみられることから、原因検索が治療への近道とされます。
詳しい問診が非常に重要なのはいうまでもありませんが、経過や発症部位より光線が関与する接触皮膚炎が疑われるときは光パッチテストを行ったり、光線が関与しない接触皮膚炎の時には疑わしいものでパッチテストを施行することになっています。また全身性の時には疑わしいものを実際に使用してみる検査や、内服して症状を誘発する検査が必要となります。
したがって、安易にIgE-RASTなど採血による検査を行うことは無意味であると考えられており、接触皮膚炎の原因を解明するためにはパッチテストが最も確実かつ有用な方法とされています。原因を特定し、接触を断つことで接触皮膚炎を根治できるという意味においても、非常に良い検査方法といえます。
日本皮膚科学会でも接触皮膚炎の原因検索を行う際にパッチテストは必須の検査であり、「行うことが強く推奨される」とされています。
ただし、患者さんの体調や皮膚の状態、検査に使用する物質の濃度設定、検査を行う者の技量、判定のタイミングなどによって結果がばらつくことがあったり、パッチテストを行うことにより(感作)、今まで反応していなかった物質に対して新たに皮膚炎など反応を惹起してしまう危険性も伴うので、このパッチテストだけが万能の検査と考えることなく、検査の実施には総合的な判断が求められます。
☆当院では、パッチテストパネル®(S)を用いたパッチテストを行っています
(金属パッチテストも今まで通り行っております)
※金属パッチテストの検査~金属パッチテスト~の項目をご参照下さい
当院ではアレルギー性接触皮膚炎の原因検索の一つとして、パッチテストパネル®(S)を採用しています。
パッチテストパネル®(S)は、日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会で選定された25種のジャパニーズスタンダードアレルゲンシリーズを元に作成された、アレルゲン22種類を一度に皮膚に貼付してパッチテストを行うことができるアレルギー性皮膚疾患検査です。
世界の各地域でその地域の環境や使用されている医薬品、植物などの分布を考慮して選定されたものをスタンダードアレルゲンとして選定しています。欧米ではベースラインシリーズを呼ばれていますが、日本では私たちの生活環境に存在して接触などにより感作される頻度の高いものを時代ごとに見直してジャパニーズスタンダードアレルゲンとし、2008年の改定時には25種のもので構成されています。
この検査は、皮膚炎を起こしている原因として、皮膚に接触する化学物質や日用品、化粧品、薬剤、食物などが関係していないかどうかを調べる検査です。
右図のように背部に種々のアレルゲンを貼付して2日後、3日後に反応を観察することで、皮膚炎と何らかのアレルゲンが関係しているかどうかを確認します。
本来は皮膚炎が治ってから原因の確認のためにパッチテストを行うものではありますが、なかなか皮膚炎が治らない方にも実施することがあります。
パッチテストを行うことによって、思いもかけないようなアレルゲンが原因であったことも多数報告されています。
また、普段の生活の中で注意すべきものを明確にすることもできる効果もあり、将来的に皮膚炎が発症する予防にもつながる有用な検査でもあります。
☆パッチテストパネル®(S)の内容
<参考資料>パッチテストパネル®(S)の内容と、主な接触源の例
☆パッチテストの手順
1. 検査当日
通常、上背部に試薬を含ませたシール状のパッチを貼ります。
上背部以外では上腕外側に貼ることもありますが、下背部や前腕には偽陰性を生じることが多いため貼りません。
貼ったパッチがはがれやすそうなときは、周囲を絆創膏で補強することもあります。
2. 2日後(第1回判定日)
パッチ除去後、判定を行います。
パッチは除去されているので入浴は可能ですが、検査部位は激しく洗うなどしないようにして下さい。
3. 3日後(第2回判定日)
この日も判定を行い、検査終了となります。
4. 7日後(第3回判定日)
経過により、この日にも判定を行うことがあります。
☆パッチテストスケジュール
☆パッチテストを行う上での注意事項
1)検査を希望される方は予約が必要です。予約日に来院できない場合は、準備の都合がありますので、前日までにご連絡をお願いします。
2)検査中、パッチ貼付後から第1回判定(2日後)まで、入浴しないで下さい。また、ひどく汗をかかないように心がけ、激しい運動は控えるようにして下さい。したがって、検査に適した時期は10月頃~4月頃となり、夏場は正確に検査を行えないことも多く、この検査を行うことは推奨しません。
ただし、汗をかかないことを前提に、検査部位を濡らしたり蒸れたりしないよう工夫して洗髪するのは構いません。
3)多少痒くてもパッチをはがさないようにして下さい。それでもパッチがはがれそうなときには周囲を絆創膏で補強して下さい。掻いたり、叩いたりしてもいけません。まれに我慢できないほど強い痒みや痛みを生じることがありますが、そのような場合は除去するか来院するようにして下さい。
4)パッチをはがした後は、貼ってあった部位にマークをつけさせていただきます。後日、マークが薄れてきたときには上から書き足すようにして下さい。
5)検査の試薬が衣服につくこともありますので、多少検査試薬がついてもよい衣服を選ぶようにして下さい。また、パッチテストは背部に貼付しますので、貼付したテープがずれないようにするため、パッチの貼付中はブラジャーをしない方がよいでしょう。
6)判定するには経過時間が重要です。正確な判定のため、指定された時間帯に必ず来院されるようお願いします。
7)パッチテスト試薬により、非常に強い反応を起こした場合は色素沈着をしばらくの間、残すことがあります。まれに、色素脱失や瘢痕形成も起こすことがあります。また、パッチテスト用のテープでかぶれる方もまれにいらっしゃいます。あらかじめご了承下さい。
☆検査費用
健康保険が適応される検査です。
1,938点の保険点数が定められています。
費用としては健康保険自己負担割合3割の方で、5,810円です。
ただし、初診料、再診料などは別途かかります。